「できたぞ♪」
オーブンから焼きたてのケーキが出てきました。
「あ!シェフの頭みたいですね!」
「なんだと…!」
シェフの頭もホクホクです。
「これにお酒を漬すんだ」
「クンクンクン…、お!これはグランマニエと、ブランデーとシロップですね!」
「よくわかったな」
ふ、さっき仕込みしてたのをみてたのさ、これで私の株が上ったってもんよ。
「もちろん、なんて名前かわかってるよな?」
「う?うーんと、あれれ?名前出てこないっすー」
「ババだ。」
ふぅ、危機一髪。
「あー、そうですね!ババ!ババっすね〜!」
「イタリアだとどこの焼き菓子だ?」
「えーーーーーーーーー…っと トスカーナ?」
「調べろーーーーー!!!!」
…と、今度の試作は”ババ”
南イタリア”ナポリ”の伝統的焼き菓子です。
ブリオッシュに近いケーキにラム酒風味のシロップ染み込ませた物です。
シェフはオレンジの酒のグランマニエとブランデー風味で。
ふっくら焼きあがった生地にお酒を漬します。
次の日、シェフの頭はしぼんでしまいました。
「シェフーー…。」
ちょっと切ない。
すっかり生地の中にお酒が染み込みました。
でも、お酒の量が足りなかったのか、上の方は乾いてます。
試食してみると、染み込んでいるところは口に入れた途端ジワっとお酒が出てきます。
上の染み込んでいない部分も、表面の皮が香ばしく、サクっとしていておいしいです!
「これは全部染み込ませず、半分だけにしたらどうだろうか?」
「賛成!賛成!」
一緒にワインも合わせて飲んだのですが、
これが、染みているところ、皮の部分、スポンジの部分でぜんぜんワインとバッチリ合うのが変わってきます。
「これは面白い!」
どうやらシェフは頭の中で決まったみたいです。
「でも、全部染みこませなきゃ”ババ”と言っていいんだろうか…?」
「”半ババ”でいいんじゃないんすか?プッ」
「それ、いいな!そういこう!!」
え?!それでいっちゃうの!?
メニュー化までしばしお待ちを…。